子育てを共に担う―フィンランド・日本・ポルトガルにおけるコペアレンティング(共育)と出生率に関する研究から

イベントの日付と時間:
23.10.2025 16:00

日程: 2025年10月23日(木)
時間: 日本時間 16:00 / フィンランド時間 10:00 / ポルトガル時間 8:00
所要時間: 3時間
開催方法:オンライン
言語:英語(自動翻訳機能による日本語字幕付き)
参加費:無料

リンク先(Peatixイベント申込サイト)からお申込みください。参加費は無料です。

https://coparenting2025.peatix.com

主催: フィンランドセンター(Finnish Institute in Japan)
共催: 東洋大学国際共生社会研究センター / Centro Cultural Portuguêsポルトガル文化センター

本ウェビナーは現代の子育てに焦点を当てます。新たな親が直面する課題、ジェンダー平等な子育てと家族の幸福を支える方法について考察します。ジェンダー平等な子育てと家族の幸福を促進する重要な課題として、講演者はコペアレンティング(共育)に焦点を当てます。これは、親が責任を公平に分担し、共に子育てを目指す姿勢を指します。本ウェビナーでは、少子化とその背景にあるであろう理由についても取り上げます。講演者はフィンランド、日本、ポルトガルの3カ国から参加し、コペアレンティング国際共同研究(CopaGloba)で収集したデータを分析しました。国際比較調査の結果に基づき、講演者は育児における社会文化的文脈の役割について考察します。

プログラム

16:00-16:20   開会挨拶およびウェビナーテーマ紹介
Kaisa Malinen (カイサ・マリネン、ユヴァスキュラ応用科学大学) 

16:20-16:45   「子育てにおける「親以外の大人」の役割:フィンランドと日本の比較」
Anna Rönkä (アンナ・ロンカ、ユヴァスキュラ大学)/藪長 千乃(東洋大学、同国際共生社会研究センター研究員)

16:45-17:10  「日本における育児休業と夫婦間の効果的なコミュニケーション」
伊藤 大将(東京都立大学、東洋大学国際共生社会研究センター客員研究員)

17:10-17:35  「コペアレンティング(共育)を支援する家族サービス」
Marjatta Kekkonen (マルヤッタ・ケッコネン、フィンランド国立保健福祉研究所) 

休憩

17:40-18:05   「子育てのナビゲート:フィンランドにおける仕事と家庭の葛藤と子育てへの自信のダイナミクスが第二子出産の意思をどのように形成するか」
Sanna Moilanen (サンナ・モイラネン、ユヴァスキュラ大学)

18:05-18:30  「第二子出産意思決定における支援の役割」
Marisa Matias (マリザ・マティアス、ポルト大学) 

18:30-18:55 パネルディスカッション「社会文化的文脈が親の協力をいかにかたちづくるか 」
司会 Kaisa Malinen (カイサ・マリネン)パネリスト:藪長 千乃、Marisa Matias (マリサ・マティアス)、Marjatta Kekkonen (マルヤッタ・ケッコネン)、Anna Rönkä (アンナ・ロンカ)

※パネルディスカッション中に質問の補足があった場合、日本語についてはその場で通訳の対応をします。

開会とウェビナーのテーマ紹介

はじめに、カイサ・マリネンがウェビナーのテーマ、コペアレンティング国際共同研究プロジェクト(CopaGloba)、そして日本・フィンランド・ポルトガルという各国の社会文化的背景について簡単に紹介します。

カイサ・マリネン博士は、コペアレンティング国際共同研究プロジェクトの共同代表であり、家族心理学のドセント(教授総統の教員資格)を持ち、ユヴァスキュラ応用科学大学(フィンランド)にて主任研究員として勤務しています。研究分野は家族のウェルビーイングや家族支援サービスで、現在は里親のコペアレンティングに関する研究プロジェクトを主導しています。

子育てにおける「親以外の大人」の役割:フィンランドと日本の比較

祖父母や友人といった「親以外の大人」が子育てに果たす役割について取り上げます。アンナ・ロンカと藪長千乃が、フィンランドと日本において、第一子の乳児期の親が受けた情緒的・実際的サポートの類似点と相違点に関する調査結果を紹介します。

アンナ・ロンカ博士はCopaGlobaプロジェクトの代表のひとりで、ユヴァスキュラ大学教育学部の教授です。研究分野はコペアレンティング、仕事と家庭の相互作用、家族のウェルビーイングです。フィンランド・アカデミー助成金等の大規模国際研究の実績が多数あります。

藪長千乃はコペアレンティング国際共同研究プロジェクトの日本チーム代表であり、東洋大学国際学部教授です。近年の研究では、ジェンダーや福祉供給に着目してフィンランド福祉社会の発展を明らかにしています。

日本における育児休業と夫婦間の効果的なコミュニケーション

日本人の夫婦を対象にした縦断的インタビュー調査を用いて、父親の育児休業取得が夫婦の子育てにおける協力や家事分担に与える影響について、伊藤大将が報告します。

伊藤大将博士は東京都立大学の准教授であり、東洋大学国際共生社会研究センターの客員研究員も務めています。研究分野は家族社会学で、特に家事労働の分担や時間の使い方に関心を持っています。

コペアレンティング(共育)を支える家族支援サービス

子ども・家族分野の専門職を対象としたフォーカスグループインタビューを基に、予防的な共同養育支援に関する3つの異なるディスコースを提示し、その実践的な応用について、マルヤッタ・ケッコネンが議論します。

マルヤッタ・ケッコネン博士はフィンランド国立保健福祉研究所(THL)の上級研究員で、子ども家族センターサービスや育児支援、コペアレンティング研究を専門としています。現在、CopaGlobaプロジェクト(2019–2022)の一環として、コペアレンティングへの支援に関する論文を執筆し、学術雑誌への掲載が予定されています。

子育てのナビゲート:フィンランドにおける仕事と家庭の葛藤と子育てへの自信のダイナミクスが第二子出産の意思をどのように形成するか

フィンランドの第一子の親たちの乳児期の育児経験が第二子を持つ意思決定にどう影響するかについて、サンナ・モイラネンが現在実施している研究から得た知見を紹介します。特に、親への移行期における仕事と家庭の葛藤の変化や育児への自信に焦点を当てます。家族研究の視点から近年の出生率低下にアプローチした調査の結果は、過去15年間で出生率が急激に低下した現代フィンランドにおいて、親としての経験と出産意思決定の相互作用を明らかにするものです。

サンナ・モイラネン博士は現在ユヴァスキュラ大学の教員であり、フィンランド・アカデミーの助成を受けてフィンランドにおける出生率の低下に焦点を当てた「OneChildプロジェクト」(2022–2025)を実施しました。この研究では、初めての親となるカップルや親となったカップルの経験—親になる過程、子育て初期段階、仕事と家庭の両立—が、第二子を持つ決断にどのように影響するかに焦点を当てています。

第二子出産意思決定における支援の役割 – マリサ・マティアス

多くの国で出生率の低下が深刻な課題となっています。本報告では、CopaGlobaプロジェクトの結果を利用して、社会的支援や家族のダイナミクスが第二子出産の意思決定にどのように影響するかを探ります。1歳6か月の子どもを育てているポルトガルの夫婦を対象にしたアンケート調査やインタビューから得られた結果によると、前向きなコペアレンティング、強固なソーシャルネットワーク、制度的支援への満足が、第二子を持ちたいと考える夫婦に共通して多く見られました。一方で、仕事と家庭の両立の難しさや不平等な育児分担が浮き彫りになり、家族を支援する政策や実践の重要性を示しています。

マリサ・マティアス博士はポルト大学心理学・教育科学部(ポルトガル)の助教授で、ジェンダー、家族関係、仕事と家庭の両立に関する研究に焦点を当てています。これまでに、CopaGloba、親のバーンアウト(燃え尽き症候群)、リモートワークをテーマとした国際共同研究プロジェクトなどに参加しています。