この度、ゲイ・カルチャーのアイコン的存在であり、その作家名Tom of Finlandとして知られる、フィンランド出身アーティスト、トウコ・ヴァリオ・ラークソネン(1920-1991)の日本初となる個展を開催いたします。渋谷パルコのGALLERY Xで開催する本展は、フィンランドセンター、駐日フィンランド大使館、Tom of Finland財団、The Container gallery、パルコの共同開催となります。展覧会のキュレーションは東京を拠点にキュレーターとして活動しながら、自身のギャラリーThe Containerのディレクターを務めるシャイ・オハヨン氏が担当。さらに、展覧会が開催される本年は、Tom of Finlandの生誕100周年(#TOMs100)という節目でもあります。
Reality & Fantasy 〜 The World of Tom of Finland
2020/9/18(金)〜10/5(月)
会場: GALLERY X (渋谷PARCO B1F)
営業時間: 11:00~21:00
*最終入場は営業終了時間の30分前
*10月5日(月)は18:00に営業終了いたします。
入場料: 500円
*未就学児の入場はお断りいたします。
本展覧会では、1946年から1989年の間に製作された30点の作品から成り、Tom of Finlandのキャリア全体を網羅しながら、彼の多彩な才能に注目すると同時に、LGBTQの権利を世界中に推し進め、ゲイ・カルチャーの創成期を担ったLGBTQのレジェンドとしての彼の一面も紹介します。
フィンランド センターは様々な関連プログラムを開催予定です。関連プログラムについて詳細はこちら。
アーティストについて
Tom of Finlandの作家名で知られる、トウコ・ヴァリオ・ラークソネン(1920年5月8日生まれ、1991年11月7日没)はフィンランド出身、ホモエロティックなビジュアルの作品や20世紀後半のカルチャーシーンに多大な影響を与えたことで名を馳せました。イラスト、ドローイング、版画、ペインティングなど、彼の残した作品は3500点以上にのぼり、エロティックなポージングや構図で男性を主題として描き、近代の社会における男性らしさやゲイ男性の立場を再定義することを試みました。
主な作品の収蔵先にはニューヨーク近代美術館、Rhode Island School of Design Museum of Art、シカゴ美術館、ロサンゼルス現代美術館、ヴァイノ・アールトネン美術館(トゥルク)、バークレー美術館(ロサンゼルス)、ロサンゼルス・カウンティ美術館、ヘルシンキ現代美術館、サンフランシスコ近代美術館、Tom of Finland財団(ロサンゼルス)等がある。
2006年、Tom of Finlandの作品5点が財団からニューヨーク近代美術館へ寄贈される際に、ジュディス・ロスチャイルド財団の理事であるハーヴェイ・S・シップレイ・ミラー氏に「20世紀の最も影響力のアーティストを5人挙げるとするならば、Tom of Finlandはそのうちの一人である。非常に素晴らしいアーティストであり、彼が与えた影響は並外れたものである」と言わしめた。
展覧会について
「Reality & Fantasy The World of Tom of Finland」は、作家の40年にわたるキャリア全体を網羅しながら、グラファイトやグアッシュ、マーカー、ペン、インクなどのさまざまなメディウムを用いて制作された作品を紹介し、Tom of Finlandの活動のマイルストーンとも言える作品を通し、彼の人生や実践を通して発展していった芸術的なスタイルを軸に展開します。彼が40代~50代頃に制作していたグアッシュを使用したペインティングでは、彼自身がフィンランドの軍隊に従事していた経験が見て取れ、海兵隊や兵士、警察官といったスタイリッシュな装いや制服姿の男性が幻想的かつロマンティックな構図で描かれています。60代~70代のころにはレザーの衣服を身にまとった男性や鍛え上げられた肉体を持つ男性がスタイリッシュに描写されるようになり、ロサンジェルスに拠点を移したキャリア後期には、洗練された、コントラストの高いグラフィティカルなドローイングを残しました。
また、本展ではアスレチックモデルギルド(AMG)からコミッションとして依頼を受けて制作された作品も数多く展示します。AMGは、アート写真として女性のヌード写真が認められていた一方、男性のいかなるヌード写真をも禁じる当時のアメリカの検閲に関する法律に対するリアクションとして、ボブ・マイザーによって1945年に設立されました。マイザー、AMG、そして彼らの発刊していた雑誌『Physique Pictorial』はアメリカでの同性愛者の権利運動と同義であり、LGBTQの人々が社会的に受容されていく基盤を築きました。マイザーとTomは長きに渡って一緒に仕事をしていました。当時の流行を心得て、Tomの名前に「of Finland」を付け足すアイディアもマイザーによるものです。本展では、Tomの名が一躍有名になるきっかけとなった、『Physique Pictorial』誌の表紙を飾ったドローイング2点(「無題」(AGM『Men of the Forests of Finland』より、1957年)、「無題」(AGM『Motorcycle Thief』シリーズより、1964年)など、誌面で掲載されたドローイングも数多く紹介します。
この展覧会では、Tom of Finlandが担った役割にもフォーカスしています。彼はゲイの人々が変えようと戦っていた法律や社会の厳しい現実に直面しながらも、男性の身体を官能的でエロ
ティックに描くことで社会の変容とゲイの人々が受容されることを促したのです。性の解放とともにファンタジーの世界を追求しながら、Tomはまったく新しい「ゲイの男らしさ」を描くことで、当時の社会がゲイ男性に押し付けていたイメージを払拭しました。
Tom of Finland財団について
非営利団体であるTom of Finland財団(ToFF)は、1984年にダーク・デナーと彼の友人であるトムによって設立されました。Tom of Finlandはホモエロティック・アートの巨匠として世界的に認知されていたので、財団の本来の使命はTomの膨大な作品を保存することでした。設立から数年後には、性的な行動を描いたり、性的な反応を生み出すアートに対する過激な差別に対抗して、エロティック・アートが制約を受けずに発表できる環境を作り出すことへと活動の範囲を押し広げました。ToFFはエロティック・アートがもたらす文化的な効果を社会に広く知ってもらうための教育活動と、性に対するより健全で寛容な姿勢を促す努力を続けています。 www.TomOfFinland.org