サーリネンとフィンランドの美しい建築 展
美しい森と湖で知られる北欧の国フィンランド。日本でもファンの多いフィンランドのモダニズムの原点を築いたのがエリエル・サーリネン(1873-1950)です。サーリネンはヘルシンキ工科大学在学中に出会ったゲセリウスとリンドグレンと共同で設計事務所を設立し、1900年パリ万国博覧会フィンランド館の建築が好評を博して、みごとなデビューを果たします。初期の作風は、ナショナル・ロマンティシズムと称される、アール・ヌーヴォーの影響をうかがわせながらも民族の独自の文化的ルーツを表現した建築で、当時、独立を求めていたフィンランドの人々を鼓舞させるものでした。
3人はやがて、静かな自然のなかで暮らしながら協働し、芸術家たちと交流できる理想の生活の場として、ヴィトレスクをつくります。住宅、商業建築、公共建築、駅や都市のデザインと、次第に幅を広げていくサーリネンの設計活動は、20世紀前半の近代化と手を携えていました。その作風は、多様な文化を受け容れつつ民族のルーツを希求した初期のスタイルから、独自の形態を通じて新しいフィンランドらしさを提示しようというモダニズムへと展開します。
本展は、1923年の渡米までのフィンランド時代にスポットをあて、図面や写真、家具や生活のデザインといった作品資料の展示を通して紹介します。つねに革新を求めつつ、自然や風土に根ざし、光と陰影をとりこんで豊かな表情を見せるサーリネンのデザインは、生活のあり方を一歩立ち止まって考え直す時を迎えている今の私たちの心に深く語りかけるでしょう。
関連イベント
講演会 「1900年パリ万国博覧会フィンランド館―芸術家たちのネットワークと込められたメッセージ」
1900年パリ万博フィンランド館は、人と人との交流と多大な努力によって成功をおさめました。それは建築、工芸、デザイン、美術、音楽が一体化し、真のフィンランドらしさを表現する総合芸術作品となりました。偉大な成功を導いた芸術家たちの情熱的な連携のプロセス、そしてフィンランド館の建築と諸芸術に込められた意味を探ります。
講師 アンナ=マリア・ウィルヤネン氏(美術史家、フィンランドセンター所長) *英語による講演、逐次通訳つき
7月4日(日) 午前10時 ~7月6日(火) 午後6時まで、講師のアンナ=マリア・ウィルヤネン氏による講演の動画をYouTubeで公開します。(事前登録不要、無料配信)
展覧会概要
展覧会会期 2021年7月3日(土)~9月20日(月)
パナソニック汐留美術館
〒105-8301東京都港区東新橋 1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
開館時間 午前10時~午後6時(ご入館は午後5時30分まで)
※8月6日(金)、9月3日(金)は夜間開館 午後8時まで(ご入館は午後7時30分まで)
休館日 水曜日、8月10日(火)~13日(金)
入館料 一般:800円、65歳以上:700円、大学生:600円、中・高校生:400円、小学生以下:無料
※障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名まで無料でご入館いただけます。
詳細はパナソニック汐留美術館のホームページよりご覧ください。
Photo: Finnish Heritage Agency, Historian kuvakokoelma